雨あがり

15年以上付き合ってきたパートナーを突然死で亡くす【安川さん】

安川さんは友人の紹介で出会い、15年以上付き合ってきたパートナーを突然死で亡くされました。パートナーとの暮らしで幸せな経験をさせてもらったという安川さん。その経験から出会いで幸せな人が増えて欲しいと、LGBTQのお見合いサイトを作ろうと決意されました。そんな安川さんにインタビューしました 。

セクシュアリティについて

私は幼い頃から女性扱いされることが嫌でした。学生時代は制服のスカートも嫌でジャージを着ていました。入学式や卒業式では仕方なくスカートも着ていましたが、それ以外は怒られてもジャージで通していました。セクシュアリティは一応FtM(Female to Male)です。戸籍を変えたり手術をする予定はないですが、既に外見は男性っぽく、男子トイレにも入れるので今のままでもいいと思っています。

家族へのカミングアウト

兄弟には女性が好きだと言って、カミングドウトしました。「やつぱり」くらいの反応でした。兄弟の知り合いに紹介される時は「男性っぽい見た目ですけれど、姉です」と言う感じで紹介されます(笑)

25年続けてきた料理人

料理人を25年してきました。コックさんの制服姿に憧れて調理師専門学校へ行き、卒業後は都内のフレンチやイタリアンのお店を何カ所か回りました。料理人の仕事はめちゃくちゃ厳しく、25年経っても毎日修行ですね。
職場では一切カミングアウトしていません。カミングアウトすることで揶揄われたりするのは嫌なので、仕事とプライベートは分けるようにしています。ただパートナーが亡くなった時、一週間くらい休みを貰いました。同居人が亡くなったと上司に言ったのですが、どう説明すればいいのかは迷いました。

パートナーの突然死

パートナーとは20代後半から15年以上付き合っていました。出会いは共通のLGBTQのお友達からの紹介でした。そこから付き合い始め、私が一人暮らししていた所にパートナーが来て、半同棲しました。その後はパートナーの実家に引っ越し、サザエさんでいうところのマスオさん状態で一緒に住んでいます。パートナーの両親も高齢なので、今後は介護をする覚悟の元、今も一緒に住んでいます。
パートナーの両親にはカミングアウトしていないけれど、わかっていないのか、わかっているのか、完全に娘扱いされています。自分の両親よりも長く住んでいますね。10年以上住んでいるので、ご近所さんにも普通に認識されています。
パートナーとの生活は男女であれば普通の結婚生活でした。けれど4年前にパートナーが亡くなりました。パートナーは特に持病もなかったのですが、いつも通り晩御飯を食べて、5時間ほど寝て、朝起きたら亡くなっている状態でした。脳幹出血でした。医者曰く、本人も死んだと言う認識がないくらいの突然死でした。

緊急時に必要だと感じた「結婚」

ハートナーとは結婚できていれば、していたと思います。今はパートナーシップもありますが、人の話を聞くと、病院での緊急時に使えなかったり、引っ越しして住所を変更すると無効になったり。そう思うと結婚ができたらいいなと思います。
私もパートナーの緊急時に病院へ行った時、動揺して訳が分からない状態でした。同居人ですと言ったのですが、警備員に入れて賞えませんでした。パートナーの母親に迎えに来てもらい、ようやく病院に入ることができました。
私はパートナーの両親と良好な関係が築けていたのでラッキーだったと思います。そういう緊急時に関係を認めて貰えないと、パニック以上ですよね。パートナーシップをやってると言っても、それが使えなければ意味がない。うちみたく両親の連絡先を知っていたり、親族と良い関係であれば問題はないかもしれませんけれど。だからLGBTQを認めてくれる社会がいいと思います。

お見合いサイトを作ることになったきっかけ

パートナーが亡くなった後、私も出会いが欲しくなり、LGBTQのお見合いをやっているパーティーに行ってみました。そこではLGBTQの用語も知らないようなおばちゃんたちが運営をしていました。お見合いの方法も昔のシステムで、この人とこの人どうかしらとスタッフが選んで会わせる。ただそれだとカップルになる率が低いと感じました。
そこでLGBTQのお見合いは当事者の気持ちがわかる当事者がやり、Webサイトを作って、セクシュアリティや年齢、趣味や好きなものを公開して会員同士が見て会えるようにする。その方がLGBTQをまるで知らないおばちゃんたちがチョイスして合わせるより、カップル成立率が高いと思ったことがきっかけで、お見合いサイトを作ろうと決めました。
世間にはアプリやSNSもありますが、ネカマがいたりサクラがいたり、どんな人が来るかわからないことを私は怖いと思ってしまいます。アプリでカップルになれるならいいですし、アプリを上手く使える人たちはお見合いサイトは使わないと思います。どこで出会えばいいのか分からない人に使ってもらえたらと思います。お見合いサイトでは身分証を提示していただき、出会う場所もうちの事務所を利用していただけます。安心安全の出会いを提供することが目標です。

今後のお見合いサイト

目標としてはWebサイト、アプリを作り、全国に事務所を作って、会員同士が会える場所を増やしていきたいと考えています。
地方の方がセクシュアルマイノリティに会える確率は低く、カミングアウトもなかなかしづらいと感じています。地方で悩んでいる人がセクシュアルマイノリティと出会える場所があると、生きていくことに少し希望がもてますよね。料理の仕事もそうですが、私は人が喜んでいる姿を見るのが好きなんです。お見合いを通して出会えてよかった、ありがとうと言ってくれる人がいれば幸せですね。
一生一人だったらどうしようかと悶々としている人が、パートナーやお友達と出会えて、少しでも楽しく、少しでも自分に自信を持って生きていって欲しいです。

安川さんより一言

最終的にはLGBTQはいることが当たり前の世の中になって欲しいです。世界中を見れば、同性婚ができる国もある。LGBTQもそうでない人もみんなが幸せになっていいんじゃないかなと思います。
私は「人間いつ死ぬかわからないよ」と言いたいです。普通に寝ている間に、大切なパートナーが死んでしまうこともあるのですから。私も当時はだいぶ落ち込んで、頭がおかしかった時もありました。でもプラスに考える人間なので、少しずつ乗り越えてここまで生きてきました。
もしパートナーが亡くなっていなければ、一生料理人をやって、パートナーと普通に生活して人生を終えていたと思いますし、お見合いサイトをやろうという発想にもならなかった。でも私はパートナーと暮らして幸せな経験をたくさんさせてもらいました。人と付き合うことはいいことだなと思いますし、自分以外に大切な人がいることは生きる糧になったり、希望になったりと大事なことだと思います。
もちろん皆さんケンカしながら付き合っていくとは思いますし、離れたりくっついたりすることもあるけれど、パートナーが欲しい方は楽しく生活できる人と出会い、幸せになって欲しいですね。

2022年8月発行雨あがり9号「結婚」掲載