雨あがり

17歳差のパートナーと運命的な出会い【Asahi Adachiharahさん】

大学で臨床心理を学ぶAsahiさんの夢は、アーティストとして活動すること。ご自身で描かれた絵や、17歳差のパートナーとの生活をインスタグラムに投稿し、見た人に気づきと勇気を与えられたら嬉しいとAsahiさんは言います。そんなAsahiさんにインタビューしました。
You Tubelいーちょんねるの新メンバーにパートナーと就任。Instagram X

セクシュアリティについて

当てはめるとしたらジェンダーはノンバイナリー、セクシュアリティは…レズビアン?パンセクシュアル?一人称はsheでもtheyでも。なんというか、世間で男らしさ·女らしさの概念がなくなってきている中で、身体的な違いを除いた時に男女の違いが何か分からないというか、何をもって男·女とするのかがわからなくて。
小学生の時にはすでに赤いランドセルやピンク、ハートなどの”女の子らしい”とされていたものは好きじゃなくて、水色のランドセルを背負って私というジェンダーを生きているつもりでした。
女性を好きだと気がついたのも小学三年生の頃。セクシュアリティとかジェンダーなんていう言葉は後付けで、周りと違う自分は特別だ、とポジティブに捉えていました。なので当時から相手の性別を明かした状態で友人や姉に恋愛相談もしてて、隠す気はゼロでした。

カミングアウトについて

中学·高校時代に海外のミュージカルや映画をよく観ていて、自分の属性やカミングアウトというものを知りました。そこで、マイノリティであることは”一応”明言すべきことと思い、17歳の時に家族や関わる大人に「私は性別関係なく人を好きになるパンセクシュアル」と伝えました。
私の家族はみんな芸術系の人間のため、リベラルな考えができると私は思い込んでいました。なのでカミングアウトをすることはあまり怖くなくて。そもそも、私が誰を好きになろうと家族には関係のないことだと思っていたので、カミングアウトをして受け入れてもらう、理解してもらうというのは意味がわからなかったです。
実際は当時80歳の祖父が一番あっさりと受け入れてくれました。ただ、同性を好きなのは女子校のノリ·憧れの延長ではと、母からの理解をなかなか得られなくて。でも私が同性しか好きにならないし、かつ家族に対してオープンだったので徐々に理解してくれました。

17歳差のパートナーと運命的な出会い

パートナーとの出会いは新宿二丁目。パートナーとは年齢差が17あるので、同じコミュニティやSNSではきっと出会えない。その時その場に居なかったら出会えなかったと思うと、運命を感じますね。人生初の一目惚れでした。
ただ、当時21歳の自分と、38歳のパートナーにとって、数年の交際の重さは全く違う。今思うと最低ですが、私はパートナーと付き合わない理由というか、嫌いになれる要素を見つけようとしました。それでも知れば知るほどパートナーは魅力的で、悩んだ挙句、私から気持ちを伝えました。やはりパートナーは混乱していましたし、「Asahiはこれからの人生があるからやめろ。」と言われました。それでも好きな気持ちは確かなもので、猛アタックをして付き合いました。
今はお互い実家暮らし。二人で暮らすことは今は難しいので、週末だけパートナーが家に来ています。
パートナー自身はまだ家族にカミングアウトしていませんが、私は人それぞれに事情やタイミングがあるので急ぐものではないと思っています。ちなみに、私の家族とパートナーは仲良しでみんな彼女のことが大好きです。

「子どもを産むのは使命」そんな世間に息苦しさを感じる

私、子どもがあまり得意ではないんです。「産んだら変わる」なんてことを言う人がいますが、子どもってそんなお試し気分で産むものではないし、実際、我が子を愛せずに虐待や育児放棄が起きている。
子どもを産むことは素晴らしいというのも、女性だからといって産むことを前提とされているのも本当に嫌です。
いつか子どもが欲しくなるかもしれない、その可能性は否めません。ただ、子どもを持つ方法は色々あるし、まずは自分自身を愛せるようになることから始めたい。私は自分を大切にできる人生を歩みたいです。
こんなことを言うと、せっかく産めるのにとか、神様に失礼とか、更に私がセクシュアルマイノリティだから生産性がないとか言われますが「MVbody-mychoice.」これは私の身体です。私が決めます。

世の中に対して思うこと

生きにくさを感じている人たちの努力を踏み躙ったり、見て見ぬふりをしたりする人たちがこの国の中心には沢山います。
「自分には関係ないこと」と片付けてしまうことは暴力に近い気がします。当事者にはなれなくても想像することはできるはずです。想像力を養うためには教育やメディアが変わらないといけないと思っています。
幸い今はネットに繋がる媒体さえあれば、多様な生き方や海外の文化にも触れられる。そこに私は希望を持っています。日本のテレビだけじゃない、それ以外のものに誰だって触れられる。いかに自分が狭い世界で生きているのかと知ることから、誰しも始めなければいけないと思っています。

短編映画『VeiIs』について

今回は体調不良で出演を断念しましたが、この作品に少しでも携われて本当に良かったです。脚本は勿論、関わるみなさんが最高で。
映画に出られなかったことは残念だけれど、自分自身のセクシュアリティ、パートナーとの関係性や自分自身の生き方を見つめ直すきっかけになったので、感謝しかないです。
作品の見どころは、まず物語が本当に素敵。それと出演するキャストさん。主演の1人である相馬有紀実さんは特に、脚本にあるキャラクターそのもの。こんな人だったら好きになっちゃうなという魅力的な人です。監督であり、私が務めるはずだったもう1人の主人公を演じるなかやまえりかさんとの掛け合いは間違いなく素敵だと思います。
まだ完成を見れていないですが、完成した『VeilS』を見たとき、私は映画に出られなかった悔しさよりも感動で泣くと思います。丁寧に作られた愛のこもった作品です。

Asahi さんの「夢」

個人的な夢は、アーティストとして活動していくこと。私は今、臨床心理を大学で勉強しながら、自身の経験をもとにメンタルヘルス、フェミニズム、SOGIをテーマに絵を描いていて、自分の絵が多くの人々の心に届いたら嬉しいです。
また、パートナーとインスタグラムを始めたことで、2021年は二人でモデルのお仕事をさせて頂く機会が沢山ありました。想像以上に素敵な出会いに恵まれ、同性カップルであり、歳の差カップルであるというダブルマイノリティな私たちを通して、ほんの少しの気づきと勇気を与えられらたらいいなって思えるようになりました。
そして大きな夢ですが、私は全ての人々が自分を好きでいられる世界を夢見ています。体型·病気·ルーツ·国籍など何も関係なく、皆が皆、自分自身を愛せる世界になってほしいです。
そういう世界を目指す一人の人間として、私は表現活動をし続けたいです。私の絵やパートナーとの活動が、誰かの心の支えや気付きになれば最高ですね。

2022年2月発行雨あがり8号「夢」掲載