
ゲイ男性から精子提供を受け、子供を授かったYさんとNさんご家族。同性同士で子育てをしているロールモデルが少ない為に、精子ドナー探しは情報がなく苦労したそうです。「子供は可愛くて愛してるから、結局他の親と変わらない」と語ってくれたYさんとNさんの、愛情いっぱいな子育てについてお話を伺いました。
お二人のセクシュアリティについて
Y:性自認は女でバイセクシュアルです。今まで男女共にお付き合いをしたことがあります。小学校の時から同性を好きになることもあったので、そういうものかと思ってあまり気にしていませんでした。
N:私は今はレズビアンになるのかな。恋愛する相手の性別にはこだわっていません。中学校の頃に男性と付き合ったのが1回だけで、そこからは全く恋愛をせず。で
も職場でYさんと出会い、今に至ります。
仲のいい職場の同期から、Yさんの「結婚しよ」で付き合うことに
Y:Nとは元々職場の同期。同期の仲が良くて、Nともよく喋っていました。でも朝起きたらN のこと好きかも? と急に思って。そこからご飯にもよく誘って、遊びま
くりました。そして2人で行った初めての旅行で「結婚しよ」と言ったんです。Nが「なにそれ本気なの?嘘でしょ?」って。でも私はずっと「結婚しようよ。本気でそう思ってる。」と言い続け、OKをもらいました。
N:Yは今まで会ったことのないタイプの人で面白いと思っていました。そしたら遊ぶ機会がどんどん増えて。で、旅行になって。旅行の前からなんか距離が近いなと
思っていました。だから旅行では何かあるのかな?何かあったらどうしよう?と悩みつつ行ったんです。そしたらYからまさかの「結婚しよ」で! 半日くらい考えました。でもなんやかんや私も最初から気になっていたからOKしました。
周りへのカミングアウト
N:付き合って数ヶ月経ってから職場の同期、家族と仲のいい友人にカミングアウトしました。
Y:私もそうです。私の母は、なんとなく私がバイセクシュアルだと思っていたみたい。でもいざカミングアウトされると悩んでしまい、いろんな人に相談したそうです。相談していく中で落とし所が見つかったようで普通になりました。父は私の結婚相手が男性だと嫌という面白い理由があったので、だからいい意味で全く気にしていなかったし、父的には女性が来て良かったようです。兄弟も「そうだと思った。」くらいでした。
子供を持つということに対して家族の反応
Y:両親は、よく知らない人の精子だし、遺産や認知で揉め事が起き、それで子供に悪影響になることを心配していました。でも司法書士も入れて、もし子供に障がいがあったら、男か女か、双子だったら等という、生まれる前の段階から法的な文章を作って貰ったことを伝え、我々の気持ちも伝えると、危なくないなら良いよ、と言ってくれました。
N:私の家族は同性の恋人がいるというカミングアウトの段階で拒否の思いが強かったみたいで。元々の家族との関係性もあり、話し合うにも至らず。かなり古い考えの親なので、拒否したいわけじゃないけれど受け入れられないと。なので基本的には関わっていないです。

ゲイ男性から精子提供、シリンジ法で子供を授かる
N:付き合い始めた当初からYが子供欲しいよねと言っていました。なのでぼんやりと今後のイメージはありました。私は恋愛経験も少なかったから、将来子供をもつイメージがなかった。でも一緒にいる人がいるなら家族が増えて欲しいという思いは強くなっていったので、子供を産むことに賛成しました。
Y:精子ドナーは、ゲイで子供が欲しい人を探しました。1人目に会ったドナーは本当に話が合わず、なかなか合うドナーはいないのかと絶望しました。でもその後ブログで今の方に会って。その方と1年のやりとりを経てドナーをお願いし、シリンジ法で産みました。
N:Yはシリンジ法でトライするタイミングを何ヶ月も前から排卵・検温等でチェックをしていて、準備は万全にしていましたね。
Y:ドナーには子供の生物学上の父親として、子供が会いたい時は会うということになっています。子供が出自を知りたい時のために、そういう関係性にしたいと思って相手を探しました。

苦労したドナー探しから、他の家族と変わらない子育て
Y:私は家族に愛情たっぷりに育てられたタイプで、子供に対しては愛情がたくさんあれば大丈夫だと思っています。なので子供をもつことに対してはあまり悩まなかったです。ただ精子ドナー探しは情報がなくて、苦労しました。
N:私は結婚も妊娠もしていないけれど子供ができる、ということを周りにどう理解してもらうかを心配していました。Yが妊娠〜出産まで在籍していた職場は、運よく上司がLGBTQに理解ある人だったので、休み等を周りにバレないように調整してもらいました。
Y:実際に子どもを育ててみると、めちゃめちゃかわいい。でも大変。
N:一緒だよね。どの家族も。めちゃめちゃ大変だけれど可愛くて許しちゃう。
Y:マイノリティだからという壁にも今のところ当たっていなくて、普通に過ごせています。
N:私は一時子供とちゃんと関係を持てるかという不安もありました。私は産んでないけれど愛せるのかなと。何度もYと話し合いました。でも生まれてからは忙しくて、本当に可愛くて。パパに近いような感覚です。
Y:ロールモデル的な人がいないからわからなかったけれど、結局可愛いから愛してる。
N:そうね。可愛くて愛してるから、結局他の親と変わらないです。
子供をもつことに悩んでいるセクシュアルマイノリティへ
Y:悩みの内容にもよるけれど、世間的にどうかという悩みであれば、無責任には言えないけれどそんなにそこは問題じゃないのかなと育ててみて思います。
運が良かったのか、「なにその関係!」「子供が可哀想」とか言われたことはなくて。驚かれても、みんなすんなり受け入れてくる。結局子供が健やかに育つことが一番だから、行政的に親じゃないから弾くということもなくて、家族として3 人を扱ってくれています。病院や保育園もどっちが行っても何も言われない。母子手帳には女2人の名前が書いてあります。Nは誰ですか?と聞かれたことがあり、パートナーですと説明したら「そうですか。」とさらっと言われたりして意外と問題ないです。あとは子供を大事に思う気持ちが一番だと思っています。

同性婚で平等な家族の権利を
Y:同性同士で子供をもつことを国が想定していないから私は扶養に入れません。代わりに婚姻関係を結べない相手と住んでいるということになるので、市にはひとり親として認定されています。ひとり親手当で同性婚のできない不平等をなんとか紛らわせています。
N:個人的な意見ですが、同性同士でも結婚できるようにして欲しいですね。結婚して平等に家族の権利を得たいです。
Y:私たちのような家族が、普通に街で暮らしていて、実はそばにいるかもしれない、と考えてみて欲しいです。最近は同性同士で子供をもつ方がどんどん増えてきているし、セクシュアルマイノリティで子供をもつことを迷っている人には、子供を育てているセクシュアルマイノリティも結構いるんだと知ってもらい、勇気をもって欲しいですね。

2021年8月発行雨あがり7号「家族」掲載