雨あがり

映画コラム【キッズ・オールライト/トモちゃんとマサさん】

レズビアンカップルがそれぞれに産んだ姉弟は、同じドナーから精子提供を受けた子たち。その子だちが大学進学を目前に、生物学上の父親に興味を持ち、母親に内緒で会いに行くが、そのことをきっかけに家族の形が少し変わり始めてしまう。姉弟の父親さがしが今、始まる。
監督: リサ・チョロデンコ /2010年 アメリカ


登場人物はそろいにそろって、みーんな曲者。家族の関係も一筋縄では解決できるわけもなく、全員がぶつかりあい、崩壊の危機も訪れます。
なぜ、愛している人を傷つけてしまうのか、なぜ傷つけられるのか?長く一緒にいると、たとえ家族であろうと関係性や互いに抱く気持ちが変わってしまうのか?家族だから、家族なのに、100%分かり合えないのはなぜ?普通の家族ってなんだろう?そもそも普通って誰が決めるの?誰もが一度は抱えたことのある問題なのではないでしょうか。
同性同士で子どもを育てること、精子提供を受けること、シングル親同士が共に家族として生活を共にすること…残念ながら日本ではまだまだ異質なものとして見られます。愛に溢れた素敵な家族愛、新しい家族の形があってもいいのではないでしょうか。
パートナーや家族との関係にちょっと悩んだとき、時々この映画を思い返してもらえたら嬉しいです。
あなたとあなたの大切な人と共に、ぜひお楽しみください。(コラム:Sumire)

アラ古希(=70歳)ゲイの「トモちゃん」と「マサさん」、およびその周りのゲイ仲間の日常を描いたドラマ。全5話。十数年前に公演された舞台のその後を描いた作品となっているが、その舞台を知らなくても楽しめる作品。
監督:スエナミシンジ/2018年 日本


内容は、浮世離れしたゲイの華やかな生活というより、むしろ知り合いの葬式やマルチ商法といった直接的にゲイに関係ない問題も多く、誰にとってもリアリティが感じられます。しかし、これらに決して悲観する訳でもなく、笑い飛ばしてなかったことにする訳でもなく、2人はそのような日々を明るくかつ淡々と生活しています。対照的に、OP・ED、場面転換時に挿入されている全くストーリーに関係ない動画が、ものすごくシュール (笑)。
2人は、どうやらパートナーという訳ではないようですが、「もしもの時のために」と合鍵を交換するほど付き合いが長く、あけすけな話もできるほど信頼し合っています。そしてそのような人付き合いのある人がゲイコミュニティに何人もいるようです。こういう「依存先」が年を取っても何人もいるというのが、実はとても健全で、筆者もこういう年の取り方をしたいものだなと考えさせられました。
なお、本作はYouTubeにアップされているオリジナルドラマです。つまり、今この記事を読んだ方はすぐにYouTubeにアクセスして本作をご覧になれます。全編一気見しても1時間強、一気見用のプレイリストもあります。English subtitle is available. ぜひご視聴あれ!(コラム:Jitian)

2019年8月発行雨あがり3号「新しい」掲載