雨あがり

カテゴリーに縛られる必要はない【たかせうみさん】

漫画「カノジョになりたい君と僕」を連載中のたかせうみさん。今回はたかせさん自身のセクシュアリティや恋愛観、そして「カノジョになりたい君と僕」ができるまでをお伺いしました。
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セクシュアリティについて

私の性自認は女性で、性的指向はセクシュアルフルイディティです。男女の性別を問わず、好きになった人が好きで、自分が異性愛者であるとか同性愛者であるとかにもこだわらないです。20歳の頃に初めて同性を好きになり、同性愛者なのか?と疑問に思いつつ暮らしていました。でも色々な経験を経て、今の状態になりました。

同性を好きになり、悩んだ末 カテゴリーに縛られる必要はないと気付く

初めて同性を好きになった時、最初は認められなくて悩みました。あの子が男なら好きなのに、と周りに言い続けていました。結局その子とは1回だけ2人で出かけられたのが思い出で、告白もできずに終わりました。
その子の前の恋が小学生の時で、転校して来た男の子への一目惚れ。でもやっぱり子供だったのであまり男女とかを意識していない恋で、だから大人になって女性を好きになったということは、自分は同性愛者なのかと悩みました。
レズビアンの場合、ネット上で出会いを求める時に自分の立ち位置や見た目などを書き込まなければならないことが多いです。フェミニンとか中性とかボーイッシュとか言われても、私はどこに入るんだ?と。当時はボーイッシュな格好が好きでしたが、レズビアンのボーイッシュだと男装に近い人も多く、そこまでかっこいいかと言われるとそうでもないし、でも中性でもないし・・・とそのカテゴリー分けに悩みました。
しばらく悩んだ後、言葉に縛られるのは違うなと。私あってのカテゴリーなんだから、カテゴリーに縛られる必要はないと気付き、だんだんレズビアンだとかなんだとかも気にしなくなり、様々な出会いを試してみて、その中で男性も女性も好きになれるとわかりました。

幼い頃から描き続けた漫画

学生時代は同い年の子たちとうまく溶け込めず、変な子だねと言われることが多かったです。なんとなく馴染めず、なんとなく学校に行けない時もありました。
そんな小学生時代に漫画を読んで、私にも描けそう!と子供の思い上がりで挑戦しました。でも実際描いてみたら全然うまくいかなくて。試行錯誤を繰り返して、初めて漫画編集部に原稿を送れるくらいに仕上げられたのが中学3年生の頃でした。
一度漫画家を諦めて社会人になり、5年くらい漫画を描きませんでした。社内で様々な問題が起きた時期にもう一度漫画を描くか悩み、結果会社を辞めて漫画をまた頑張ってみることにしました。

連載中の「カノジョになりたい君と僕」

この漫画は男の子に生まれた女の子・アキラちゃんに恋をする、女の子の主人公・ヒメちゃんの物語。ヒメちゃんの恋してるアキラちゃんは幼馴染で、体は男の子だけど、心は女の子。アキラちゃんは高校入学と同時に女生徒の制服を着て通うと決意しました。ヒメちゃんは決して自分の恋心は明かせないと思っていて、それはアキラちゃんを好きと言ったら、男としてみていると思われて、相手を傷つけてしまうかもしれないから。でも好きな子が一生懸命自分らしく生きていくという決断を応援したいから、ヒメちゃんは学ランを着て高校に通うという行動に出る。さあ二人はどうなる?というのがこのお話の始まりです。

「カノジョになりたい君と僕」ができるまで

この作品には、自分らしさとは?という問いかけと、そのままでいていいよというメッセージを込めています。アキラちゃんは自分の心は女の子だから女の子の格好をすることが自然なことで、ヒメちゃんはアキラちゃんのことが好きだから、アキラちゃんを応援する為に学ランを着る。それはヒメちゃんにとって、自然な流れ。心から自然なことだと選んだそれらの選択ですが、アキラちゃんは周りから中傷されたり、ヒメちゃんは女の子なのに学ランを着るというちぐはぐさに悩んだりします。人と関わっていく中で「これが自分らしさだ」と思っても、後から「本当にこれでよかったのか」と悩んだりすることは誰にでも起こり得ることだと思います。だか
らひとつの選択というよりは、ひとつずつの選択の積み重ねが自分らしさを作っていくということを伝えたくて、この漫画を描きました。

たかせさんにとっての告白

恋愛的な告白でいうと、自分から告白してしまう方です。とりあえず好きになったら言わずにはいられなくなります。一人では抱えきれないというか(笑)好きと言えたら幸せですね。
また、仲のいい一部の方にはセクシュアリティをカミングアウトしています。今の漫画を描いていて、自分のセクシュアリティを打ち明けなくてはいけない時が来た時に、メディアを通して知られるのが嫌だったので。
同性と付き合っていた経験があり、男女どちらも好きになれるということは言っています。カミングアウトをした時は、「そうなんだ」「そんな気はしてた」とあっさり受け入れてもらえました。

たかせさんのこれから

私が今の漫画を描き始めたのはセクシュアルマイノリティを1番のテーマに取り上げようと思ったわけではなく、ただヒメちゃんとアキラちゃんという女の子たちがいて、二人が恋をしたり友情を育んだりしていく中で、たまたまセクシュアルマイノリティというものに該当したという感じなので、これからもカテゴリーには囚われず、難しく考えすぎず、楽しいものを描いていけたらと思っています。
またSNSなどで感想をいただくこともあり、この漫画が誰かの勇気になれているんだなと感じることがあります。悩める人に「カノジョになりたい君と僕」が届いたら嬉しいです。
セクシュアルマイノリティであるということは今の世の中では隠さなければいけない、特別なことという雰囲気があると感じています。でも将来的に血液型くらいになればいいですね。血液型は言っても言わなくてもどちらでもいい。隠しておかなきゃいけないとか、わざわざ男女どっち?と聞かれなきゃいけないとか、そういうものではないものになればいいなと思います。

たかせさんより一言

単行本1 〜2 巻が出ています。GANMA!というアプリなら無料で読めます。今後ラブ方面で盛り上がってく「カノジョになりたい君と僕」をお楽しみに!

2020年2月発行雨あがり4号「告白」掲載