雨あがり

「お互いの子供が見たい」それは異性カップルと変わらない想い【Sさん・ Nさん】

ゲイの方から精子提供を受け子供を妊娠・出産したSさんと、現在同一の方から精子提供を受け妊活中のパートナーNさん。ずっと子供をもちたいと思っていた
Sさんですが、今まで付き合った方は子供をもちたい人がおらず諦めていたそうです。ですがNさんと出会い、2人の子供を育てたいと言ってくれたことで、子
供をもつことが叶いました。お2人が子供をもつ上で大切にしたことは「2人でよく話し合うこと」。そんなお2人にインタビューしました。

セクシュアリティについて

S:私はレズビアンです。7歳頃には女性の方が好きでした。私の時代は今のようにネットが普及しておらず、本や雑誌を読んで小学校高学年頃には自認していました。
N:私もレズビアンです。実際に自認したのは大学の時でした。大学の先輩にバイセクシュアルで オープンな人がいて、私は別の先輩が好きだったのですが、その先輩に「あの人のこと好きでしょ?」と言われて、「女同士だから無いですよ。」と返したら「そういう恋愛もあるよ。」と言われて同性愛を知り、自認しました。

カミングアウトについて

S:両親には8〜9年前に以前お付き合いしていた女性を紹介しましたが、いい反応を貰えませんでした。一時的なもので、次付き合うのは男性かもしれないと期待していたようです。でも次に連れてきたNも女性だったので「この子は女性が好きなんだ。」と理解してくれました。
子供に関しては、カミングアウトする前から「結婚しなくても子供がいれば楽しいから精子提供で子供は産んだら」と言われていたので、Nと子供をもつと言ったらすんなりと認めてくれました。
親戚や友達には一部の人だけ伝えています。自営業ですがお客様には話していないので、私は男性と結婚して子供が産まれたと思われています。
N:私は大学4年生の時にインカレのセクマイサークルに入って帰りが遅くなった際、母に理由を聞かれて、カミングアウトしました。子供に関して母は賛成で、積極的に知ろうと情報を集めたり、同性同士で子供をもちたい人の為のイベントにも一緒に行ってくれたりして、協力的でした。父には子供をもつことについていい顔をされませんでしたが、産まれてからは可愛がってくれています。
職場にはなかなかカミングアウトできませんが、子供が産まれたばかりの頃、会社に同性同士が使える制度がなかったので要望書を出して作って貰いました。制度の利用は直属の上司へのカミングアウトが伴うため予定していませんが、他にもいるであろう当事者が使えたらと思っています。

「お互いの子供が見たい」それは異性カップルと変わらない想い

S:母に以前「子供がいると成長と共に自分の人生を思い返せる。人生で一番楽しかったのも子供を育てている時だった。」と言われてから、私もいつか子供を育てたいと思っていましたが、今まで付き合ってきた人は子供が欲しい人がおらず諦めていました。でも今の彼女は子供が欲しいと言ってくれたので、付き合ってすぐに子供をもつことについて具体的に動き始めました。
きっかけはよく聞かれるのですが、異性カップルと変わらないと思います。彼女が子供好きで、子供にも好かれる姿をずっと見ていたので、彼女の産んだ子を見たいし、育てたいと思いました。彼女も私の産んだ子供を育てたいと言ってくれたので、年齢的に私が先に妊娠・出産し、彼女は今妊活中です。

二人で散々話し合い、子供を産むことを決意

S: 女同士で子供を育てることについて、「可哀想」「子供がいじめられる」という意見もありますが、世間の無理解に関しては、散々2人で話し合いました。昨日今日知って色々言ってくる人より、同性同士で子供をもつ当事者たちはずっと考えていると思います。
子供をもつにあたっては、お互いの両親が安心できるよう、同性婚が認められている国で結婚式を挙げ、マリッジサーティフィケート(婚姻証明書)を取得、婚姻に準じる婚姻契約公正証書を作成し、子供を迎える環境を整えるため家を建てました。

ゲイの方から精子提供を受けて

S:子供同士は血が繋がっていた方がいいと考え、私たちは一人の方から精子提供を受けています。日本には法的に認められた精子提供機関がないので、自分たちでドナーを探しました。変な人に出会うことも多く、とても苦労しました。探す上で重視したことの一つに「私たち以外に精子提供をしない人」というのがありました。ネットで精子提供者を検索してみると「子供が2 0 人産まれました。」「100人に提供しました。」 と誇らしげに書いている人もいます。どこにその人が提供して産まれた子がいるかわからない状態だと、子供同士が同じドナーをもつことを知らずに偶然出会ってしまう可能性もあり、非常に怖いです。私たちのコミュニティは狭いこともあり、私たち以外に提供しないと約束してくれる方を選びました。
結局今の方とは、ゲイとビアンの友情結婚のサイトで出会いました。とても誠実な方で、息子が将来会いたいと言った場合は会うと言ってくれています。
自分の出自に関して迷って生きていくのは望ましくないので、会うか会わないかは子供の判断に任せたいと考えています。一度会ってどういう人か分かっていればそこまで執着しないと思いますし、物心がついたら、「あなたの家族はお母さん2人だけど、それとは別にあなたに血を分けてくれた人がいる。父親ではないけど、親切で優しい人だよ。」と伝えていくつもりです。

実際に子供が生まれて

S:生活が息子中心に変わりましたが、とても楽しいです。異性カップルだと男女の役割分担が出てしまうこともありますが、母2人だと特に分担がなくお互い何でもできるので楽ですね。子育てに関してもそうです。
N:息子は可愛いですし、生活も規則正しくなりました。
S:ですが子供をもつことは必ずしも楽しいことばかりでは無いと思います。彼女とデートするような自由な時間はほぼ無くなりました。私たちはそれを苦と感じていないですが、しんどいと感じる人もいるかもしれません。
好きな人と2人で自分たちの為だけに時間を使える人生も有意義で幸せだと思います。そういう時間を無くしてでも子供を育てたいかはよく話し合うことが大事だと思います。

子供をもちたいセクシュアルマイノリティへ

S:SNSを見ていると、最近セクシュアルマイノリティで子供をもつ方がとても増えてきているように感じます。息子の同級生だけでも 7、8人はいます。
そもそも私がTwitterを始めた理由は、日常生活ではなかなか知り合えない、子供をもつ同性カップルと知り合いたかったからです。子供が同じ境遇の子と仲良くなれれば、この先もし家庭環境を理由に孤独を感じることがあっても、小さい頃からの繋がりで少しは悩みも軽減するのではないかと考えたためです。
子供をもつなんて無理という人もいるけれど、少しずつ同性カップルでも子供をもちやすくなっていると感じます。子育ての悩みはありますが、それは異性カップルも同様だと思います。
子供をもつことは責任を伴いますが、あまり思い詰めてしまうと先に進めなくなってしまうのではないでしょうか。
私も彼女が一緒に育てたいと思ってくれたから子供をもつことができたので、 2人が同じ方向を向いているのなら、そこまで考え込みすぎなくてもいいと思います。
子育ての悩みは家族間で話し合って解決する問題もあると思いますし、パートナーとよく話し合うことが大事だと考えています。

2021年8月発行雨あがり7号「家族」掲載