雨あがり

お酒が飲めなくても楽しめたり、友人や親を連れてきたりできるお店をつくりたい【さとこさん】

新宿二丁目にある女性専用バー「どろぶね」のオーナー・さとこさん。さとこさんにとっての「どろぶね」とはどんな場所なのでしょうか。またさとこさん自身、子供が欲しいと思って始めた活動「こどまっぷ」についてもお話を伺いました。

9年目を迎えるバー「どろぶね」について

どろぶねを作る前から二丁目には来ていたのですが、二丁目は同じ様なマイノリティの人が集まる分、安心な部分と、同じマイノリティだからと一括りにはできない部分で、居場所がないと感じることもありました。ナイトライフが中心の二丁目では恋愛が中心に回っている人も多く、もっと日常の話をしたり、お酒を飲めなくても楽しめたり、友人や親を連れてきたりできるお店もあったらいいなと思っていました。

当時、親にカミングアウトはしてましたが、それもなかったことになっていたような状態で(笑)。いつかセクシュアルマイノリティの友人がいて、自分がマイノリティにならない場所で、親ともう一度向き合いたいと思っていました。それもあって親と来られるお店をつくりたいな、という想いがあったんです。今では親も店に何度も来ていて、母が料理上手なので、母が料理を出す「母の会」をやるほどになりました。
オープンから変わらないことは、初心者の方に対しての気持ち。自分も初めてお店の扉を開ける時とても勇気がいったのでそれは絶対忘たくない部分です。

さとこさんにとってのどろぶねとは

お店をやりながらもいつもお店の在り方みたいなもので悩んでいました。試行錯誤を繰り返した結果、楽しかったといってくれる方や、また来てくれる方がいたり、遠方の方がずっと来たかったと言ってくださったり。ようやく自分が目指していた店づくりができてきたかの知れないと、今は店を愛おしいと思っています。

実は昔から人見知りで、話も上手じゃないし、はじめはお客さんが楽しんでくれてるか心配でした。少しずつ慣れて、今は色々な方とお話しできるのが面白いと感じています。最近では海外の方も多く、英語が喋れなくとも頑張ってコミュニケーションをとっています。昔より人間らしいお店になってきたかな(笑)。お店と共に自分も成長させてもらっていると感じるし、お客さんも含めて、そこにいる人と共に生きてるなって感じます。

さとこさんにとってのどろぶねとは

「二丁目」は所謂ゲイタウンなのに「レズビアン」だけ「ゲイ」だけと差別化されたお店も多く、自分と違うセクシュアリティの人との接点がない一面もあります。特定のセクシュアルマイノリティが集まれる場所も必要だと思うんです。でもそうじゃない場所もあったらいいなと。恋愛だけじゃなくコミュニケーションのとれるほっこりするお店、同じ足湯に入って良い関係をつくれたら面白いんじゃないかと思って。

私の親も昔はレズビアンを怖がっていたけど、実際会うと「普通で良い子ばかりだ」と言われました。ご飯を食べながら友達と話したりしている光景は、それはみんな普通の人ですよね(笑)。でもセクシュアリティだけが独り歩きして、その人自身がどういう人かは置いてけぼりになることって少なくないと思うんです。足湯cafe&barどん浴は、みんながフラットに人としてお互いを知れるような、誰もが来られるお店として、あえてこの二丁目でオープンしました。未成年でも来られるように日中からお店を開けているのも、色々な世代の方に、少しでも「行ける」場所になってもらえたらというこだわりの一つです。

お店の今後について

忙しくてスタッフが付いてきてくれるか不安だけれど、イベントを沢山やっていきたい!(笑)イベントで繋がりができて、そこから誰かや私の人生が変わるかもしれないし。変化も常にもっていたいです。失敗するかもしれないけどチャレンジしたい。「うちはそういうのやらないよ」とかなく、心の赴くままに何でもやってみます。面白がって興味を持ってもらえたら嬉しいです。

さとこさんにとってのどろぶねとは

「こどまっぷ」というセクシュアルマイノリティの中でも子供をもちたい人や持ってる人を支援する活動をこの数年間しています。子供が欲しい人は多くて、でも情報がなかなかなかったりして。情報交換や交流ができる場所が欲しいと思ったのがきっかけです。子供が生まれた時には、子供同士が親戚のように近くにいて、成長も共有できればいいなと。

今は色々な方に子供が生まれて、少しは情報交換できるようになってきました。でも地方では子供どころか自分のセクシュアリティについても言えなかったり、情報も繋がりもまだまだない。だからどんどん東京以外の場所の人ともつながりたいと思っています。今後は困った時に大人にも子供にも対応できるような場所を、東京だけでなく色々な地域に作りたくて。子供をもつとぶつかる壁は少なくないと思います。同性婚が成立するまでには時間がかかる。今はパートナーシップ制度はあるけど、それだけでまかなえないこともある。そんな時少しでも一緒に話せる人や、つながりがあるようにしていきたいです。

「こどまっぷ」は元々3人で始めて、実は1人が出産直後に亡くなりました。彼女は唯一自分が亡くなった時、子供をどこで育てるのかを残してなくて。精子提供したゲイカップルと彼女のパートナーも彼女の親もみんな面識もあった。でも突然のことでコミュニケーションが双方上手くいかず、必要のない段階で、子供の事で弁護士が入ってしまい空気が悪くなってしまった。私たちが間に入り、直前でなんとか裁判になることを止めました。この事の何が問題かって、みんなにとって頼れる所がほとんどなかったことなんです。だから何かあったときにLGBTだとか関係なく、誰の為になるのかをちゃんと見てくれる専門家を団体として紹介できるような仕組みも必要だと思っています。

さとこさんの今後

一生コミュニティづくりをしたいです。人とつながるのは楽しい。楽しい所に人が集まるし、それを大事にしています。
私は住む家を失ったこともあるし、お店も軌道に乗るどころか、自分に給料なんて払えない事もザラでした。でも楽しいと感じられない時も自分の状況を面白がってきました。私がお店にどろぶねと名付けた理由も、もし沈んでも名前通り泥舟だからね!って笑えるユーモアをもちたかったから。だからなんでも面白がって、楽しさに変えていきたいです。そしてつながった人から影響を受けて、化学変化を起こし、成長し続けられたらと思います。

2019年2月発行雨あがり2号「繋がり」掲載