雨あがり

誰もが主人公―糸から始まる物語 【伊達文香さん】

インドの技術やデザインを用いた衣服ブランド「itobanashi(イトバナシ)」を展開する株式会社イトバナシ。その代表を務める伊達文香さんにお話を伺 いました。itobanashiの創設から恋愛に至るまで、素敵なエピソードをお楽しみください。

誰もが主人公―糸から始まる物語

衣服ブランド「itobanashi」では手縫いの刺繍が入っ た製品を扱っています。刺繍の生産者、職人たち、受け取り手であるお客さん全員が主体的に関わってもらえるようなブランドになれば良いと思い、糸から始まるお話のみんなが主人公になれるように、という思いを込めて 「イトバナシ」です。

itobanashiを立ち上げたきっかけは、大学1年生の時に初めてインドに行ってカルチャーショックを受けたことです。インターネットで「アジア もう一度行きたい国」で調べると必ずインドが上位に出てくるんです。せっかくならもう一回行きたくなるような国に行きたいと思って、出会ったのがインドでした。ネガティブなショックと言うより、すごく楽しいと思いました。カオスな感じとか生きることを試されている感じとか、日本では味わえないようなスリルもあって、どんどんはまっていきました。

インドは刺繍や染物・織物など、テキスタイルがいっぱいあるんです。刺繍に関しても地域ごとで特徴があり、平和や家族の繁栄、幸福への祈りをこめたものだったり、デザインも昔の王宮文化のなごりを感じられるものから、身の回りの道具をモチーフにして穏やかな生活を表現したものもあります。

もともと服が好きで、自分の好きなことでインドの技術と掛け合わせて何かできないかと思っていました。 インドはまだ貧富の差が激しく、学校にいけない子供や女性が縫製の職業訓練を受けているのですが、作ったものを販売する機会がないと聞いたので、販売を促進するためのファッションショーを開きました。もっと継続的にやりたいと思ったとき、テキスタイルの中でも特に刺繍が好きだったので、刺繍を使った洋服のブランドをビジネスとして始めようと思ったのが最初です。 

「実は彼女なんだよね」 

大学1年生の時に初めて彼女ができて、自分では戸惑いがありました。相手の方から告白されて付き合うことになりましたが、自分が女性と付き合うことはその瞬間までイメージしていませんでした。
今でも自分のセクシュアリティはよくわからなくて、かっこいい風に言うと、好きになった人が好きで、相手を選ぶときに性別はあまり関連する要素として入ってきていないかもしれないです。 

母には「彼氏出来たらしいね」と言われて、実は彼女なんだよねみたいな感じで報告しました。付き合ってる人がどういう人かという話はよくしていましたが、 同性だと話した時は衝撃を受けていました。でも現在の彼女は、付き合う前からもう母に相談しています。 

カミングアウトって、犯罪を犯したことを告白するような重さで捉えている人も結構多いと思います。人によって捉え方はそれぞれだと思いますが、悪いことをしているわけじゃないし自分が好きで大事な人と付き合っていることなので、自分の周りにそういう人がいたら受け止めたいし、自分もそうされたい。構えすぎると相手も構えちゃうということもあって、あえて私はそうしているのかもしれないです。 

今付き合っている彼女とは、オフ会で飲み友達として出会いました。私が仕事の展示会を広島でしていて、彼女が岡山に住んでいるので誘ったら遊びに来てくれて、 そこから仲良くなりました。私の方がすごく好きになってアプローチしました。それで9月にインドに行っている時にですね、国際電話で告白するという。彼女にも驚かれましたね。現在東京と岡山との遠距離恋愛ですが、インドに行くことが多いと、日本国内の距離なんてあまり気にならないというか。同じ国の中にいるから、東京と岡山に住んでいても問題ない、いつでも連絡取れるからって思っています。 

サウナ部、始めました 

知り合いがサウナ部という部活の部長をしているん です。私運動が嫌いで、でも健康でいたいなと思った時に部活に誘われたんですね。サウナは真剣に入ると心拍数などをかなり使って、スポーツ並になるんです。それに今まで水風呂も怖くて入ったことがなかったんで すが、サウナの後に入ると、肌に膜が張って出たらすごくあたたかくなる。これには驚きました。サウナはこれからブームになるんじゃないかと思っています。
長野県で湖の周りに簡易サウナをいっぱい建てて、サウナに入 る→湖で水風呂を繰り返すサウナフェスがあるらしいです。今年は仕事で行けなかったので来年はチャレンジします!

仕事と、パートナーと。文香さんのこれから 

彼女とは一緒にいられるように工夫と言うか意識しながらやっていけたら、と思います。仕事が大変ですが すごく支えてもらっているので、家族の事も含めてよくなっていくといいですね。地元が奈良なので、奈良で店舗兼事務所兼住居みたいなお店を開きたいなって思っ ています。そういう所で一緒に住めたら、というのが今の願望です。

2018年発行雨あがり創刊号「はじまり」掲載